エネルギー・環境教育セミナー 報告書


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時:

令和元年11月27日(水) 14:00 〜 17:00

場  所: 福井商工会議所ビル 地下 コンベンションホール
主  催: 福井県環境・エネルギー懇話会
共  催: 経済産業省資源エネルギー庁
(北陸エネルギー教育地域会議、近畿エネルギー教育地域会議)
後  援: 福井県教育委員会
福井市教育委員会
■ 総合講評
 

京都教育大学教授 山下 宏文 氏

プロフィール

1982年東京学芸大学大学院教育学研究科修了。東京都の公立小学校教諭、京都教育大学教育学部助教授などを経て2002年より現職。専門は環境教育、社会科教育。日本エネルギー環境教育学会顧問、近畿エネルギー教育地域会議代表、他。2003年より福井県環境・エネルギー懇話会の専門委員会である環境・エネルギー教育問題懇談会の座長。

(要旨)

 今日は第20回の記念すべきセミナーで角屋先生にご講演を頂き、2校からも実践発表を頂いて20回にふさわしい内容だったと思っています。角屋先生には実は10年前にもここでご講演いただき、いろいろ示唆に富む話を頂いているのですが、今回も角屋先生から、エネルギー教育固有の資質・能力を育てていかなければいけないということをご提示いただいて、大変ありがたかったと思っています。

 それから、美浜町では町を挙げてエネルギー環境教育に取り組んでいます。こういう事例は全国的に他にないと言っていいでしょう。まさにエネルギー教育の一つの地域的な中心になっているといえると思います。この町を挙げたカリキュラムを、実践を通してぜひ改善していただいて、より良い姿をこれから提示していただけるとありがたいと思っています。牧野中学校についても、今日改めてお話を聞いて、2年ちょっとの間でかなり充実した実践ができています。

 まさに学校独自の取り組みなのですが、先日、全国会議のときに角屋先生が別のこともお話ししていて、私はそれがすごく印象に残っているのです。ある校長先生が「学校はあれもこれもいろいろなことをしなくてはいけなくなっている。その中でエネルギー教育をしていのはやはり難しい。だから、文部科学省がもっとやれと言ってくれれば、ずっとできるのだ」と言われたときに、角屋先生は何と言われたかというと、「文科省というのは大枠を示しているのであって、それに基づいてどういう教育をしていくかというのは、やはり個々の学校、個々の教師に懸かっている。だから、それぞれの学校や教師がその重要性をきちんと捉えて進めていかないと駄目なのではないか」という趣旨のことを言われました。

 まさにそのとおりで、そういう意味では牧野中学校はモデル校でもない中で、学校独自にこの教育の大切さに気づき、それを積み上げてこられました。私は、これからそうした教育を広めていく上で重要な事例を提示していただいたと思いました。何よりも学校や教師がこの教育の重要さを自覚して取り組んでいくことが大事ではないかと思います。そういう意味でも、今後この実践内容がもっと膨らんでいく可能性があるということだったので、ぜひ期待したいと思っています。

 最近のエネルギー環境教育のいろいろな実践を見ていても、非常に曖昧になっていると思っていることが幾つかあります。教育課程で育てようとしている資質・能力は知識・技能や能力、態度を全て含まれているのだというお話があったと思います。学習指導要領では三つの柱という言い方をします。それがポイントだと私は思っています。三つの柱ですから、どの柱が太くて大事というのではなく、三つとも同じ価値を持っています。そういう意味で、知識・技能の部分と思考力・判断力・表現力を比べたときに、知識・技能の方がものすごく細い柱で、思考力・判断力・表現力が太い柱ということではありません。そうすると、知識・技能の部分をもっと大事にしなければいけないのではないか、エネルギー環境教育ではこの知識・技能の部分がおろそかになっているのではないかと思うのです。やはりきちんとした知識を持ってもらって、その知識に基づいてしっかり考えていくことが求められているのだろうと思います。

 そういう部分がなくて、「考えなさい」と教師に言われても、なかなか深まっていかないように思います。角屋先生は「考えるためには、すべが必要だ」と言われました。比較と関係付けということで分かりやすくお話しいただいたのですが、そこではやはり視点や対象や基準の明確化がなければならないと述べられています。すると、「エコな暮らし」などと言って、すごく曖昧になってしまっていることがあるのではないかと思うのです。

 先週、ある学校の授業を見ていて、子どもたちが「エコライフチャレンジ」というものに取り組んでいて、その中にはリサイクルする、冷房温度を下げ過ぎない、暖房温度を上げ過ぎないといったこともあるのですが、そもそも「エコライフ」ということ自体が曖昧ですよね。「環境に優しい」「地球に優しい」という言い方をするのだと思いますが、それがどう役立つのか、どんな効果があるのかが実は見えないのです。例えばリサイクルをしたり、エコバッグを持っていったりすることによってどういう効果があるのかをきちんと捉えた上で取り組むことが大事なのではないかと思います。

 美浜東小学校の子どもたちの意見の中にありましたよね。「こんなちょっとのことで地球にいいのだろうか」という感想がありましたが、リサイクルについて考えてみると、例えばプラスチックごみが大きな問題になっていると思いますが、プラスチックは石油全体からするとわずか3%です。それをリサイクルしたところで、どれくらいの効果があるかというと20〜30%です。ですから、リサイクルしないよりはそれなりの効果があるのですが、3パーセントのうちの20〜30%ですから、それで温暖化が解決できると思ったら大間違いですよね。

 では、温暖化に対してわれわれが取るべき最も効率的な行動は何かというと、エネルギーの使用を考えることです。日本の1次エネルギーのうち46〜47%は電力になります。そうすると、電力使用量を減らしていかないと、温暖化の原因の約9割はエネルギー起源なので、温暖化を何とか止めていこうとすればエネルギーの方にもっと集中していかないといけません。少しのことを重ねていくことも大事なのですが、それで解決できると考えてしまうと非常に曖昧だと思います。

 リサイクルしているから地球温暖化は大丈夫だというのは、間違いとはいえないかもしれないけれども、それでは全く解決できません。そういうふうに、プラスチックごみや海洋汚染の問題は、また別の問題として存在します。それから、リサイクルはエネルギーではなくて資源の問題になると思うのですが、資源の問題が環境教育の中で大きく取り上げられたきっかけは何かというと、今から40年近く前になると思うのですが、ごみ処理ができなくなってきたことなのです。ごみの量が増えて、当時はプラスチックなどを燃やすとダイオキシンが発生するから燃やせなかったので、埋め立て処分するしかありません。埋め立て処分するにしても、ごみの量が多くて限界があります。ではどうするかというと、リサイクルでしょう。こういう形で問題が出てきたと思うのです。

 それはそれとしてまた大きな問題として残っていると思いますが、温暖化はやはりエネルギーの問題として捉えるべきです。そうすると、温暖化を防止するためには、やはりエネルギーの利用度をどうやって減らすのか、どう省エネしていくのかという方向に向かっていかないと、なかなか解決にはつながらないと考えられます。「考える」ということに対してもっと明確にして、そのことがどういうことになるのかということもきちんと捉えていく必要があるのではないかと思います。

 最後に、私が角屋先生の話を聞いていて一番なるほどと思ったのは、最後の「学びに向かう力」のところで、「人の姿から学ぶべきものなのだ」とおっしゃられたことです。「エネルギー・環境教育を考えたときに、人から学ぶとは具体的にどのように学べばいいのでしょうか」と質問されたら、皆さんどう考えますか。角屋先生はこう言われました。「例えば教師が電気を消している姿があるはずで、そういうことを子どもたちに見せることによって学んでいけるのではないか」とおっしゃられて、やはりわれわれ教師の姿が大きく関わっているのだなと思いました。

 今日は20回目のセミナーにふさわしいお話を聞くことができ、ありがとうございました。また来年以降も続いていくと思いますので、これからもご参加いただき、いろいろご意見を頂ければと思います。今日はありがとうございました。

 

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