エネルギー・環境教育セミナー 報告書


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時:

令和元年11月27日(水) 14:00 〜 17:00

場  所: 福井商工会議所ビル 地下 コンベンションホール
主  催: 福井県環境・エネルギー懇話会
共  催: 経済産業省資源エネルギー庁
(北陸エネルギー教育地域会議、近畿エネルギー教育地域会議)
後  援: 福井県教育委員会
福井市教育委員会
■実践事例発表U

テーマ

牧中エコプロジェクト
発 表:
高岡市立牧野中学校 校長 田中 広光 氏

(要旨)

1.はじめに

 本校は、エネルギー教育モデル校のような特別な指定を受けているわけではなく、あくまでも社会に開かれた教育課程の一環としてエネルギー・環境への取り組みを実施しています。本校では、社会が抱える課題にどう立ち向かうかという視点から、社会に開かれた教育課程の具現化を目指すことにしました。それが「牧中エコプロジェクト」です。牧中エコプロジェクトは、教科横断のクロスカリキュラム「環境」における「アクティブ・ラーニング」と生徒会活動による「アクション」を2本柱としています。
 プロジェクトの基本コンセプトは、「教科をつなげる」「小学校とつなげる」「行動につなげる」の三つです。

2.教科をつなげる

 まず、「教科をつなげる」取り組みとして、教科横断のクロスカリキュラムを紹介します。クロスカリキュラム「環境」では、次の三つの視点からカリキュラムマネジメントを進めることにしました。

 一つ目の視点として、テーマに「エネルギー環境」を選びました。その理由は、さまざまな教科に関連する単元が存在しているため、複数の教科をつなげやすく、エネルギー環境問題は生徒にとっても身近で切実な社会課題だと考えたからです。

 二つ目の視点として、マネジメントサイクルの確立を挙げました。これはPDCAサイクルではなく、本校でできそうなことをまず実際にやってみて、無理なくできたことだけを次年度の計画に位置付けていく「直後プラン方式」という独自の方法で進めています。

 三つ目の視点は、地域資源の活用です。地域を校区と捉えるのではなく、社会全体という捉え方で進めることにしました。

 構想において重視したことは、教科横断ありきではなく、あくまでも各教科の深い学び、いわゆる各教科の特色である見方・考え方を働かせたアプローチです。

 学習指導要領における各教科のねらいや学習内容を逸脱しないことを前提として、各教科の年間指導計画からエネルギー環境単元の配列を整理し、関連付けることで、深い学びを実現したいと考えています。「エネルギー環境」というテーマの中で、エネルギーミックスを扱う単元を整理してみました。2年の2学期に社会科、3学期に技術分野でエネルギーミックスに関連する単元があります。また、3年3学期ではほぼ同時期に社会科と理科でエネルギーミックスを扱っていることから、合科の単元を設定し、相互の関連を図ることで効率的に深い学びを実現する取り組みをしました。

 最初に、2年2学期に行われた社会科の授業を紹介します。地理的分野の「資源や産業の特色」という単元です。今回はより深い学びを目指し、第2次の「日本の資源・エネルギー」(1時間)を拡大して、2時間扱いで実践することにしました。題材のねらいは、「持続可能な社会の実現に向けての資源・エネルギーの有効活用について、多面的・多角的に考えさせる」ことです。そして、この授業における社会的な見方・考え方としては、具体的には位置や分布、地域、人間と自然環境との相互依存関係といった地理的な見方・考え方に加えて、「効率と公正」「希少性」「持続可能性」といった3年の社会科公民で学習する見方・考え方もここでは働かせることができると考えています。

 第1時では、理科との異教科チームティーチング(TT)で発電方法の特色を学習しました。社会科として立地条件を扱い、理科として変換効率、発電能力を扱いました。理科の先生から説明のあった、電力1kW当たりの施設総工費の比較は、経済性という社会科の視点と共通する部分もあり、社会科としての学びを深めることができました。

 授業の流れについて説明します。まず、グーグルマップを使います。グループごとにタブレットを使って、グーグルマップ上の発電所の分布から立地条件を確認し、特色を見つけ、各グループの考えを発表し合い、全体で考えを深めていきます。ここまでは社会科の授業ではありきたりの展開です。ここに理科の視点を加えるため、理科の教員が変換効率や発電能力について説明します。次に、次時の課題である「10年後の北陸地方のエネルギーミックス」をグループで考えるための調査活動をします。ここでもタブレットを活用し、例えば「NHK for School」などを利用してさまざまな情報収集をします。情報収集は中途半端に終わるので、生徒たちのインセンティブが働いて家庭学習にそのままつながりました。ほとんどの家庭にタブレットやスマートフォンがあるので、そういう活動をしたと聞いています。

 第2時ではまず、教師が北陸地方の地域的特色と発電方法としての適性を押さえます。次に、集めた情報を基に10年後の北陸地方の電力構成をグループで話し合います。2030年の政府案を北陸バージョンに変更する方法で作業を進めます。一から考えるのではなく、政府案を改良する形です。次に、各グループの考えを発表し合い、全体で考えを深めていきます。そして、電力供給事業者である北陸電力高岡支社からゲストティーチャーを招き、北陸電力が考える10年後の電力構成を説明していただきました。

 授業の詳細を少し砕いて説明します。北陸地方の冬と夏の天気を整理してみました。冬の降雪による豊富な水源を基に、水力こそが北陸地方の特色を生かした発電だという意見が多く出ました。しかし、新たに発電施設を建設するための条件を満たす場所が現実的にないこと、そして自然環境に大きな影響を与えるという点は生徒たちから出てこなかったので、教師が補足する場面がありました。

 次に、交通や地盤からも北陸地方に適した発電方法を検証しました。生徒たちは地震による大きな揺れを体験したことがなく、地震による原子力発電への不安はあまり出ませんでしたが、東日本大震災のことを少しイメージした生徒もいたようです。ちなみに私は59歳で、あと1年で定年になるのですが、実は一番大きな揺れを感じたのは能登の地震でした。富山で震度3弱でした。多分、私の60年弱の人生で一回きりの大きな揺れだったと思います。富山では本当に地震というものを感じたことがないのです。ですから、生徒たちも揺れというものを感じたことがほとんどありません。4班が考えた構成案は、水力発電の比率が高く、政府の構想とは随分異なっていました。

 北陸電力のプレゼンでは、北陸電力の現有設備が2030年の政府案の構成とほぼ一致していることを教えていただきました。また、北陸電力の方向性として三つのシナリオを想定していることなどは、電力供給事業者ならではの興味深いお話でした。ちなみにA案は地球温暖化防止を重視した場合、B案は原子力不安を解消することを重視した場合、C案はとにかく電気料金を安くすることを重視した場合の案だそうです。しかし、「決めるのは皆さんです」という言葉がとても印象的でした。4班が考えた構成案は、北陸電力のA案の考え方に近いものでした。生徒たちは北陸電力の説明を自分たちが考えた構成案と比較しながら真剣に聞き入っていました。

 授業では、北陸地方の電力構成をグループワークで考え、ホワイトボードに書き込みながらいろいろ意見交換をしました。次に、各グループの構成案の根拠をホワイトボードにまとめ、発表しました。モニターには各グループが考えた構成案が映し出されています。ゲストティーチャーのプレゼンでは大変熱く語っていただいて、「考えるのは皆さんです」と何回も繰り返し話されていたのが大変印象的で効果的でした。

 次に、2年3学期に配列されている技術分野の実践を紹介します。今紹介した社会科の授業を生かした内容です。発電の仕組みや技術について学習し、社会科の授業で考えた自分のグループの案を個々に見直し、プレゼンを作成します。これにより、社会、理科、技術科が絡むクロスカリキュラムが少し形になってきたと思います。

 次に、特設した合科単元について説明します。3年生の配列では、社会科と理科でエネルギーミックスを扱う単元が3学期に集中していることから、合科単元として実施することにしました。「持続可能なエネルギーベストミックス」と名付けた合科単元では、社会・理科から各1時間、総合から2時間を使い、4時間扱いで指導計画を立てました。言い換えると、社会科・理科では1時間ずつしか扱えなかったものが、合科にすることで4時間の配時が可能となり、理科にとっても社会科にとっても深い学びを実現することにつながります。

 技術分野の絡みを紹介しますと、技術分野には「技術分野の学習を将来に活かそう」という単元が3年3学期にあります。この単元では廃棄物処理について扱うことも可能で、それによって同時期に実施する社会科と理科の合科単元の学習との相乗効果が期待できます。

 一緒に研究グループを作って活動している他校のメンバーの実践では、生徒の感想から、廃棄物処理について他人事ではなく自分事として問題意識を持ったことがうかがえます。

 私は社会科の教員なのですが、この学習の締めくくりを社会科で行うことを考えています。社会科の最終単元「よりよい社会をめざして」では、自ら設定した課題についてレポートを作成する学習が位置付けられています。いわば卒論です。高校入試が迫り、時間が十分に取れない中、先ほど紹介した合科単元での学習をそのまま生かすことも一つの方法ではないでしょうか。

 この取り組みの中で、職員室で理科の先生と社会科の先生が「どのようにお互いの良さを生かそうか」ということで、笑顔で会話していたのがとても印象的でした。一つずつ何かをやることで少しずつ教科の壁を取り払うことが可能ではないかとも思っています。

3.小学校とつなげる

 コンセプトの二つ目は「小学校とつなげる」です。本市では次年度から、市内全校で小中一貫教育に取り組みます。今年度は互見授業を行いながら、合同の研修会を開いており、そうした場でエネルギー環境をテーマにした話し合いができればいいと思っています。ちなみに、現在作成している牧野中学校区の小中一貫教育グランドデザインでは、9年間を通してのエネルギー・環境教育の充実を柱に掲げています。今週、小中合同研修会を開いて、エネルギー環境教育を9年間具体的にどのように進めていくかという話し合いが持たれたところです。

 富山県では全県下で小学校4年次に、「とやま環境チャレンジ10」に取り組んでいます。10歳のときに地球温暖化防止のための10の行動に挑戦しようというもので、この取り組みを本校の生徒も小学4年生のときに体験していることから、中学校の生徒会活動に直接つながっています。

4.行動につなげる

 最後に、「行動につなげる」部分について説明します。生徒会の活動として、「クリーン大作戦」と銘打って地域で清掃活動を行っています。プラスチックごみなど収集したごみは分別して再生に生かしています。

 「グリーン大作戦」も行っていて、コンクリートだらけの学校を花や緑でいっぱいにする活動をしています。グリーンカーテンの取り組みでは、その効果についての調査も行いました。グリーン大作戦とともに校地緑化の一環として、技術科の授業で1年1学期に配列されている「生物育成の技術」という単元で、野菜の栽培の授業をしました。使われていなかった花壇を利用したのですが、大変日当たりが良く、キュウリ、ナス、トマト、ピーマンなど今年は大豊作で、私も生徒から届けてもらった野菜を家に持ち帰って夫婦円満を実現できました。

 ボランティア回収もしていて、アルミ缶やペットボトルを収集しています。クラス対抗で数を競い合い、「善の花」の掲示コーナーを作って、ボランティア回収の啓蒙活動をしています。マスコットキャラクター「まきのん」も作り、資源回収や節水の呼び掛けに活用しています。

5.おわりに

 今後の課題としては、牧中エコプロジェクトは各教科の学習を核にしているので、各教科の深い学びにつながったかどうかを学力として評価する必要があります。合科単元を実施する中で、社会科・理科・技術分野の見方・考え方を働かせているのか、エネルギー環境に関する課題解決のプロセスにおいて「主体的に学習に取り組む態度」として課題に対する粘り強さ、調整力を身に付けているかなどの具体的な評価は、今後の課題になります。他にも、他教科への広がり、小中の連携など課題は残されていますが、第一歩を踏み出せたことは成果です。

 

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